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椎間板内酵素注入療法とは?ヘルニアの痛みを低侵襲に改善する方法
椎間板内酵素注入療法とは?ヘルニアの痛みを低侵襲に改善する方法
【腰椎椎間板ヘルニアに対する椎間板内酵素注入療法とは?】
腰椎椎間板ヘルニアは、多くの人が経験する腰痛や下肢痛の原因です。椎間板が変性して、椎間板内の髄核が外に飛び出し、神経を圧迫することで症状が現れます。これまで、保存療法(薬物やリハビリ)や外科手術が主な治療法でした。しかし最近、日本で新たに注目されているのが「コンドリアーゼ」という酵素を使った「椎間板内酵素注入療法」が2018年に日本で保険適応となりました。
この治療法は、局所麻酔で椎間板内にコンドリアーゼを注入し、椎間板内の圧力を減少させ、痛みを軽減する画期的な方法です。注射一本で治療が完了し、回復までの時間が短いのが特徴です。当院でも2020年に治療を開始し現在300症例以上の治療を行っております。保存療法でヘルニアが縮小しにく後縦靭帯下ヘルニアが適応となります。
【どれくらい効果があるの?】
当院の論文では、即時効果、臨床的詳細な結果、予後因子を評価しました。対象は225例で、下肢痛の数値評価スケール(NRS)を治療翌日、1ヶ月後、3ヶ月後に測定。治療成績は、改善群(NRSスコア改善≧3.5)と非改善群に分類して比較されました。結果、治療翌日から症状改善が確認され、3ヶ月後には67.6%がMCID(臨床的に最小限の重要差)を達成しました。
椎間板内酵素注入療法を受けた患者225人のうち、約68%が治療後3か月で痛みが大幅に改善したと報告されています。治療直後から1か月後にかけては、約27%が「痛みが劇的に軽減」と答えています。
さらに、MRI検査では、椎間板の変化が確認され、特に椎間板の突出が大きい患者ほど効果が高いことがわかっています。この結果は、保存療法に効果が見られない患者にとって、新たな希望となるでしょう。
【この治療法のメリットと注意点】
メリット
- 全身麻酔、外科手術を避けられる。
- 入院は1泊入院のみ。
- 神経組織に害を及ぼさない安全性が確認されている。
注意点
- 効果は患者によって異なり、特に発症後6か月以内の患者に効果が高い。
- 軽い副作用(発疹など)が報告されていますが、重篤な副作用は確認されていません。
おわりに
椎間板内酵素注入療法は、腰椎椎間板ヘルニアで苦しむ患者にとって、安全で効果的な治療法として注目されています。保存療法が効果を示さなかった場合の次の選択肢として、ぜひ専門医に相談してみてください。
引用文献
Sakamoto Y, et al. Immediate Effects, Detailed Clinical Outcomes, and Prognostic Factors of Chemonucleolysis Using Condoliase for Lumbar Disc Herniation. Neurologia medico-chirurgica. May 8, 2024.
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